名古屋大学大学院の内田良准教授が「新任教員の残業 月平均90時間 名古屋 ―運動部指導で若手に多忙のしわ寄せ」というタイトルの記事を寄稿(※1※2)されています。

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(引用:新任教員の残業 月平均90時間 名古屋 ―運動部指導で若手に多忙のしわ寄せ
名古屋市教委からデータから2015年度の新任教員25名の出勤と退勤の記録を分析して、時間外労働時間を算出したとのこと。
ポイントは、

その結果、新任教員の時間外労働は月平均で90時間となり、8月を除くすべての月で、時間外労働の平均が「過労死ライン」の80時間を超えていることが明らかとなった


新任教員=運動部顧問 多忙のしわ寄せ


教員の多忙を改善するためには、まずは若手教員、なかでも運動部顧問の負担を軽減させることが最優先されるべきである。

このデータを見て頂いてどうでしょうか。
これで本当に良い仕事できますかね。
これで本当に子どもたちにキャリア教育についてもしくは「働き方」とか提示できますかね。
これで本当に希望ある社会を子どもたちに伝え、生きる力を育むことができますかね。


目の前の先生が疲弊していたら、子ども達も疲弊しますよ。皆さんの会社でどうですかね?上司が付き残業90時間していて、疲弊しまくっている中、良い雰囲気で業務に取り組めますかね?んま、無理ですよね。

世の中的にはブラック企業や労働環境・働き方についてフォーカスされていますが、 
毎日子どもたちと向き合っている先生の仕事のあり方サポート体制、いろいろ考えていかないと今表層化している現象を食い止めることはできないかと。


ちなみに、これだけ残業しているのに、残業代は出ません。教職員調整手当という4%くらいしか可算されないすさまじい制度に残業代が含まれているのです。 文科省のサイトには下記の通り記載があります。 

1.現行制度

・教員の職務は自発性・創造性に期待する面が大きく、夏休みのように長期の学校休業期間があること等を考慮すると、その勤務の全てにわたって、一般の公務員と同様に、勤務時間の長短によって機械的に評価することは必ずしも適当ではなく、とりわけ時間外勤務手当制度は教員にはなじまない。

※自発性・創造性が求められる教員の職務の例、

・授業準備のための資料作成は、どこまでを対象とするか、どこまで深く掘り下げるかなど、教員の自発性・創造性に負うところが大きい。

・いじめのトラブルを回避するために個別に面談を行う場合など、誰を対象として、どこまで丁寧に面接を行うかは教員の判断に委ねられている。

・部活動において各種の大会やコンクールなどでよい成績を収めるために、どのように指導し、どの程度まで指導を行うかは教員の熱意に基づき自発的に判断されている。

      ↓

教員の職務と勤務態様の特殊性を踏まえ、教員については、勤務時間の内外を問わず包括的に評価した処遇として、以下のように規定。


1 時間外勤務手当を支給しない。

2 時間外勤務手当の代わりに、教職調整額として給料月額の4パーセントを一律に支給。

※ 教職調整額は給料相当とされ、期末・勤勉手当や退職手当等の算定の基礎とされている。

3 時間外勤務を命じることができるのは超勤4項目(a.生徒の実習、b.学校行事、c.職員会議、d.非常災害、児童生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合)に限定し、教員に過度の負担がかからないよう、適正な勤務条件を確保。 

んまロジックはわからなくもない。
私はどちらかというと金額設定に大いなる問題があると思っています。この調整手当の算出根拠になっているのが昭和41年の「
教員勤務実態調査」なわけですが、昭和41年当時の教職員の一ヶ月の平均残業時間は約8時間だったのです(この数字が精緻なものなのかも怪しいですが)。つまり4%の算出根拠はこの月8時間の残業に対してであり、現状の月90時間とは雲泥の差なんですよね。昭和41年と比較してここまで時間外労働が増えているのは様々な要因が考えられるでしょう。現場の生の声はNAVERさんがまとめてくださっています

  1. 指導に直接関係ないペーパーワーク(いわゆる雑務と言われている業務)の増加
  2. 部活動とかイベントごとの増加
  3. 研修の増加(現場の声を代弁すると「無意味な研修」含む)などなど

ちなみに、部活動については長年の賛否両論の議論がありますよね。私も体育教員だったので、部活動に精を出す先生の気持ちがよくわかります。中には、授業内で繋がらない子ども達と部活動を通して関係を構築できるのもよくわかります。やんちゃな元気な生徒も部活動を真面目にやったりするわけです。青春ドラマ的な出来事は教室の中よりも部活動の中で起こることもあったりするわけです。

私の主張は部活動の賛否両論よりは、部活動に取り組みたい先生はそれはしっかりと取り組んでもらうのは良いことだと思っています。教育効果もあるでしょう。ただし、課外の活動を頑張りすぎて、本業(授業)が疎かになるのであれば本末転倒。「生徒と心がつながるのが部活動で」も「いやいや、そもそも授業の質を高めて、そこで信頼してもらえるように努めていくことが大切ですよ。そこができている前提で部活動を担当しましょう」です。毎日三時間を部活動に使うのであれば、教材研究に時間を使うべきかと。部活動に力が入りすぎて「教材を研究する時間がない。アクティブラーニングやICTはわかるけど、忙しくて研究する時間がない」というのには違和感を感じます。
 
安易な解決策ですぐ出るのが「外部委託すればいいじゃん」です。国や教育委員会も検討を進めている外部指導者」です。
外部指導者がいれば、部活動などの業務をの負担軽減が可能となり、生徒への専門的指導も可能になる、ということなのです。

そりゃそうだ。全員の教職員がそのスポーツや部活の内容の専門家であるわけでもないわけです。そんな中、空気的に部活動を無理やり担当させられるわけです。子ども達がかわいそうですよね。サッカーやったことがない先生にサッカー部の顧問になられるわけですから。であれば地域の学生やスポーツインストラクターに担当してもらった方が良いじゃん。良くわかります。

ただしですよ。部活動の顧問の仕事は生徒の部活指導のみならず、安全管理もしないといけないわけです。当たり前ですが、怪我とか熱中症とかいろんなことが部活動の中で起こります。
そこで出てくるのが、「誰が責任とるの?」ですね。学校で部活をやっているわけだから、学校の責任?外部指導者の責任?結構踏み込んで、法的な部分含めて整理する必要がありますよね。

あとは部活動って教育的な意味を考えると、部員が自発的・自主的に活動しているかどうかとか、運動部であればもちろん勝負へのこだわりも重要なのかもしれませんが、それ以上にチームプレイや健康増進とかけが予防について学ぶわけです。
ただし、外部指導者のほうが、勝負へのこだわりとか、生徒に長時間部活や負荷をかけたがる傾向があることは神奈川県の「中学校・高等学校生徒のスポーツ活動に関する調査報告書」で明らかになっています。そうするとどこまで学校の教育方針と部活動の方針の整合をとっていくのかもいろいろと大変そうです。

教員の多忙化の話になると、本当に様々な事情が入り混じっているので、このように複雑な議論になっていきます。とはいえ、だからと言って放置するのではなく、 改善に早急に動いていかないとですよね。

  1. 教員の業務量の精緻な実態調査を進め、
  2. 教職員のそもそもの業務を定義し、業務一覧の中で誰が何に責任を担っているのかを整理する
  3. 何が教職員のMust業務で何がNice to have業務なのかも明確にする(優先順位もつける)
    Mustな業務の中で外注するものは何なのか、効率化するものは何なのかを明確にする。ペーパーワークなども重複している調査(たとえばいじめ調査は文科省から調査がアンケート調査が来て、都道府県教育委員会や市区町村教育委員会など重複してくることもあります)が多いので、こういったものを整理していく。またはIT化・効率化を図っていく(ちなみに、教職員向けのアンケート調査は全部紙アンケートでとって、手入力で集計して、取りまとめています。いやいやWEBフォームで一発ボタン集計で良いでしょ、、って思いますよね)。
  4. 部活動などに対しても、そもそも学校での部活動の目的の再定義を進め、リスク管理や法的な観点含めて踏み込んで責任の所在を明らかにし、外部指導員を活用するのであっても目的を明確にして業務委託をしないといけないですね。そもそも部活動を切り離し、学校は場所を貸しているだけとして地域の方で部活動を実施するのも一つの案でしょうね(アメリカ型)。
  5. といのを諸々と整理した上で教職員調整手当の適切な見直し、外注などするのであってもしっかりとした予算確保ですね。 

と当たり前のことを書きましたが、これ、しっかりとした文科省の中にプロジェクトチームを組んでやるべきだと思いますよ。プロジェクトチームも大学の先生で構成するのではなく、業務分析・改善(BPR) の専門家を入れてやるべきですね。

文科省さん、すでに着手されていると思いますが、これ時間がかかるプロセスですから、早急に進めて頂く事を切望します。